アルツハイマー病の次世代画像診断法の開発
アルツハイマー病脳内で形成される老人斑(アミロイドβ凝集体)や神経原線維変化(タウ病変)を分子イメージングによって生きたまま可視化する技術の開発が進められています。アルツハイマー病の病態解明と早期診断に役立つと期待されていて、ポジトロン断層法(PET)を用いた方法は実用化されつつあります。しかし、放射性同位体を用いるPETは放射線被曝が避けられず、プローブも高価です。そこで我々は、PETに代わる(あるいは相補的な)画像法として、磁気共鳴画像法(MRI)に着目しました。MRIは原子核の核磁気共鳴現象(NMR)を利用した画像法です。我々は、比較的感度が高く、生体内にほとんど存在しないという特徴から、フッ素(19F)MRIを研究しています。これまでに、アミロイドβ凝集体やタウ病変に結合するフッ素化合物(Shiga化合物)を開発しました。これらの化合物を病態モデルマウスに投与すると、脳内で標的分子に結合します。ここでMRIを測定して脳内の標的分子に結合したフッ素化合物のNMR信号を画像化することで脳内の病理学的変化の形成を画像として可視化することに成功しました。また、最近、アルツハイマー病の発症に深く関与することが示唆されている可溶性アミロイドβ凝集体であるアミロイドβオリゴマーに選択的に結合するフッ素MRプローブを開発しました。さらにフッ素MRIによる画像化に成功し、特許を出願するとともに国際学術誌に発表しました。これからも、フッ素MRIを基盤とした画像診断法の研究を推進していきます。